「集金に行っても居留守を使われる」
「払いたくない!と玄関先で言われてしまった」
初めて班長(組長)になり、春の集金シーズンにこんな経験をして落ち込んでしまう方が毎年いらっしゃいます。
お金の問題は、ご近所付き合いが絡むだけに精神的に疲れますよね。
私はこれまで自治会長として、集金トラブルに悩む班長さんを何人も見てきました。
そこでたどり着いた結論は、「個人の感情で対応せず、『自治会のルール』として事務的に対応するのが一番の解決策」ということです。
この記事では、トラブルを最小限に抑え、班長さんの心を守るための具体的な対応手順をお伝えします。
なぜ未納が発生するのか?まずは理由の切り分けから
「払わない」といっても、その理由は様々です。
まずは相手がどのパターンなのか冷静に見極めましょう。
1. 単なる「うっかり忘れ」や「タイミングが合わない」
これ、意外と多いんです。
- 共働きで夜遅くまで帰ってこない
- キャッシュレス派で手持ちの現金がない
- 単に集金の時期を忘れていた
この場合、相手に悪気はありません。
何度も訪問するのはお互いに負担なので、「ポストにお手紙(振込先や次回の訪問日時を書いたもの)を入れる」だけで解決することがほとんどです。
2. 「払う意思がない(拒否)」
問題はこちらです。
- 「活動に参加していないから払いたくない」
- 「役員のやり方が気に入らない」
- 「自治会なんて必要ない」
こう言われた時、真面目な班長さんほど「自治会費はゴミステーションの管理や防犯灯の電気代に使われていて…」と説得しようとしてしまいます。
しかし、ここで班長が説得しようとしてはいけません。
価値観が違う相手と議論になれば、ご近所トラブルに発展するだけだからです。
トラブルを回避する未納対応の3ステップ
では、具体的にどう動けばいいのか。
私が推奨しているのは以下の3ステップです。
ステップ1:訪問記録を残す(感情論にしない)
集金業務で一番怖いのは「言った・言わない」のトラブルです。
必ず手帳やスマホのメモに記録を残してください。
- 4月10日 19:00 - 不在
- 4月14日 10:00 - インターホン応答なし
- 4月20日 18:00 - 本人対応。「払うつもりはない」との発言あり
これがあるだけで、後で役員に報告する時にスムーズですし、万が一の時の証拠になります。
「事務的に記録する仕事だ」と割り切ることで、精神的なダメージも減らせます。
ステップ2:班長だけで解決しようとせず、役員へバトンタッチ
ここが最重要ポイントです。
班長の役割は「集金のアナウンスをして、預かること」までです。「回収すること」ではありません。
数回訪問しても会えない、あるいは拒否された場合は、そこでストップしてOKです。
「わかりました。では、その旨を会長(会計)に報告しておきますね」
こう言って、速やかに引き上げてください。
無理に食い下がる必要は1ミリもありません。
ステップ3:督促状を送付する(対面を避ける)
報告を受けた役員(会長や会計)は、改めて「督促状」をポストに入れます。
対面だと感情的になりがちですが、書面なら「規約に基づく請求」であることを冷静に伝えられます。
【体験談】私が会長時代に決めていた「督促のルール」
私が自治会長をしていた時、班長さんが集金で疲弊しないように、明確な「撤退ライン」というルールを決めていました。
それは、「訪問は3回まで」というルールです。
- 通常の訪問をする
- 不在なら日時指定の手紙を入れる
- それでもダメ(または拒否)なら、「未納者リスト」に名前を書いて役員に丸投げしてOK
以前は「集まるまで何度も通う」という暗黙の了解がありましたが、それを廃止しました。
「班長さんは、プロの借金取りではありません。ボランティアです。
3回行ってダメなら、それはもう個人の手に負える問題ではありません」
そう総会で宣言し、班長さんの負担を減らしました。
結果として、役員が引き継いで督促状を送ると、「班長さんには悪いことをした」と後から振り込んでくる方も結構いらっしゃいました。
「ここまでやってダメなら、自分の責任ではない」
そう思えるライン引きがあるだけで、気持ちはずいぶん楽になるものです。
一番大切なのは「現場の班長を守ること」
班長に「説得」させない
繰り返しになりますが、ご近所同士の人間関係を壊さないことが最優先です。
集金できない家が一軒あったとしても、自治会の運営が直ちに止まるわけではありません。それよりも、班長さんが嫌な思いをして「もう二度と役員なんてやりたくない」と思ってしまう方が、自治会にとっては大きな損失です。
未納分は班長が立て替えるべき?(絶対NG)
責任感の強い班長さんの中には、「集まらなかった分、とりあえず私が立て替えておこう…」としてしまう方がいます。
これは絶対にダメです。
一度立て替えてしまうと、次からも「あの時は払ってくれたのに」と甘えられたり、うやむやになったりします。
未納は未納として、そのまま会計に報告してください。それが組織としての正しい処理です。
法的措置はとるべき?現実的な「落とし所」
「規約には支払い義務があると書いてあるから、訴えることはできないのか?」
役員会でそんな議論になることもあります。
少額訴訟はコストと手間が見合わない
法的に請求することは可能ですが、月数百円〜数千円の会費のために、内容証明郵便を送ったり、少額訴訟の手続きをしたりするのは、コストと労力が見合いません。
また、近隣住民を訴えるというのは、地域コミュニティとしてもしこりが残ります。
「退会」という選択肢も視野に入れる
現実的な落とし所としては、「会費を払わない=退会」として処理するケースが多いです。
ただし、ここで問題になるのが「会員との差」についてです。
「会費を払わないならゴミ捨て場を使うな」と言えないので、その代わり、回覧板の配布や行事への参加・記念品の配布などはストップし、明確に会員との差をつける運用にしました。
まとめ:お金の問題は「仕組み」で解決しよう
今回は、気が重い「会費未納トラブル」への対応についてお伝えしました。
ポイントは以下の3つです。
- 訪問は3回までなど、無理のない「撤退ライン」を決める
- 班長で抱え込まず、すぐに役員へバトンタッチする
- 感情で説得せず、事務的に対応する
未納対応で一番大切なのは、「対応を属人化させないこと」です。
「あの班長さんは粘り強いから集められた」
「あの人は気が弱いから集まらない」
ではなく、誰がやっても同じ対応になるような「仕組み(マニュアル)」を、役員さんが作ってあげてください。
もし、今これを読んでいるあなたが集金に悩む班長さんなら、一人で悩まずにすぐに会長や会計さんに相談してくださいね。
「報告する」というだけで、肩の荷が下りるはずです。

