「役員のなり手がいない…」
「誰も引き受けてくれない…」
これは、自治会運営において最も深く、そして普遍的な悩みの一つではないでしょうか。
私もかつて自治会長を2年間務めましたが、正直に言います。
最初は「絶対にやりたくない!」と思っていました。
周りの住民も同じです。仕事、育児、介護…誰だって忙しいですし、面倒な責任なんて負いたくありません。
しかし、実際に2年間会長をやってみて、ある重要な事実に気づきました。
皆に「役員をやりたい!」と思わせるのは不可能です。
でも、「まあ、これくらいならやってもいいかな」と思ってもらうことはできます。
この記事では、元会長である私が実践し、実際に次期役員への引き継ぎをスムーズにした「引き受けてもらえる環境づくり」の3つの工夫を包み隠さずお伝えします。
なぜ「なり手がいない」のか
「やりたくない」のは当然の防衛本能
まず大前提として、「役員をやりたくない」と思うのは正常な反応です。
私が役員選出の場にいた時も、部屋全体に「頼むから私の名前を呼ばないでくれ」という重苦しい空気が漂っていました。私自身もそう思っていましたから、その気持ちは痛いほどわかります。
- 休日の貴重な時間を奪われる
- よくわからない行事の準備をさせられる
- 何かミスをしたら文句を言われる
一般的に、自治会役員にはこのようなネガティブなイメージしかありません。
「貧乏くじ」だと思われているのです。
この「強固な拒否感」を理解せず、「地域のために協力すべきだ」という正論を振りかざしても、なり手が見つかるはずがありません。
うちの自治会の役員の決め方
- 採用方式:立候補者がいない場合、「選挙(投票)」で決定。
- メリット:「全員が公平な条件で選ばれた」という事実が、断る理由をなくす。
- ポイント:恣意的な推薦や、特定の家に負担が偏る指名を避けること。
公平性を担保する「選挙制」の導入
自治会役員の決め方は地域によって様々ですが、比較表にすると以下のようになります。
| 決め方 | 特徴 | 断られやすさ | 公平感 |
|---|---|---|---|
| 輪番制 | 順番で回ってくる | 低 | 高 |
| 推薦・指名 | 現役員や長老が指名 | 高(逃げられる) | 低 |
| 選挙・くじ | 全員の投票や運 | 低(諦めがつく) | 高 |
私の自治会では、立候補がなければ「選挙」で決まります。
もちろん、選ばれた人は嫌がります。しかし選挙には「住民全員が公平なルールで選んだ」という強力な正当性があります。
「あなたが嫌なのはわかる。でも、みんな同じ条件で、みんながあなたに任せたいと投票したんです」
こうなると、角を立てずに断り続けるのは非常に難しくなります。
推薦や指名だと「なんで私なんですか? あの人の方が暇そうでしょ」という不満が出ますが、選挙や完全な輪番制であれば、その不満をシステム(制度)に向けることができるため、最終的に引き受けてもらいやすくなります。
「引き受けてもらえる」ための3つの工夫
ここからは、選挙や輪番で選ばれた人が、「最悪だ…」と絶望せずに、「まあ、やってやるか」と前向きになれるために私が実践した3つの工夫を紹介します。
- 業務効率化:徹底的に「サボる(楽をする)」仕組みを作る。
- 非強制:「来なくてもいい」「休んでいい」と明言する。
- 楽しむ姿勢:トップが楽しんでいれば、悲壮感は消える。
工夫①
仕事を効率化して負担を減らす
- デジタル化:LINEやクラウドを活用し、集まる頻度と作業時間を削減。
- 廃止・縮小:前例踏襲をやめ、不要な行事や会議を容赦なくカットする。
- 目的:「思っていたより楽だった」という実績を作ること。
「忙しいから無理」という断り文句を封じるには、「忙しくてもできるレベル」まで仕事を減らすのが一番です。
私は「サボるために全力を出す」タイプの人間なので、アナログで非効率な作業が大嫌いでした。
そこで、以下のような改革を行いました。
- 連絡網の廃止 → LINEグループへの一本化
- 紙の回覧板 → スマホで見られるデジタル回覧板の導入
- 定例会議 → リアル開催を減らし、LINE上での決議を基本に
- 引き継ぎ → 口頭説明をやめ、動画マニュアルやチェックリストを作成
こうすることで、「役員=毎週末がつぶれる」という誤解を解き、「スマホがあれば隙間時間でできるボランティア」へと認識を変えていきました。
工夫②
強制しない。休んでもいい雰囲気を作る
- 脱・完璧主義:「全員参加」の同調圧力をなくす。
- 心理的安全性:「仕事優先でOK」「家庭優先でOK」をルール化する。
「役員になったら、全ての行事に絶対参加しなければならない」
このプレッシャーが、なり手不足の最大の原因です。
私は最初の役員会でこう宣言しました。
「仕事や家庭を最優先してください。来られない時は『行けません』の一言でOKです。理由も言わなくていいです」
無理に縛り付けると、人は逃げたくなります。
逆に「いつでも休んでいいですよ」と逃げ道を用意しておくと、不思議なことに人は責任感を発揮して協力してくれるものです。
「強制されない」という安心感が、参加へのハードルを劇的に下げます。
工夫③
会長自身が楽しんでやる
- 雰囲気の伝染:リーダーが辛そうだと全員が辛くなる。楽しそうだと全員が楽になる。
- マインドセット:「やらされている」ではなく「自分たちの遊び場にする」。
これは精神論のように聞こえるかもしれませんが、最も効果があったのはこれです。
会長である私が、眉間にシワを寄せて「大変だ、辛い」と嘆いていたらどうなるでしょうか? 他の役員も「早く終わってほしい」としか思わないでしょう。そしてその陰鬱な空気は地域に伝わり、次のなり手がさらに逃げていきます。
私は「どうせやるなら、楽しんでやろう」と決めました。
- 会議の後には、好きなお菓子を持ち寄って雑談する(もちろん自由参加)
- イベントでは、役員自身が一番楽しめるような企画を混ぜる
- 「これ、面白そうじゃない?」とアイデア出しをゲーム感覚で行う
私が笑って「これ良いね!」と言っていると、役員のみんなも「じゃあ、私はこれを手伝いますよ」と笑顔で動いてくれるようになりました。
結果として、役員期間が終わる頃には「大変だったけど、意外と楽しかった」「いい思い出になった」と言ってもらえました。
「やりたくない」を「やってもいいかな」に変える
- ゴール設定:100点のやる気は求めない。60点の「許容」を目指す。
- 実績の積み上げ:「あの代は楽しそうだった」という評判が、未来のなり手不足を解消する。
繰り返しになりますが、「自治会役員をやりたい!」と目を輝かせて立候補してくる人を待っていても、そんな人は現れません。
私たちが目指すべきは、「そこまで負担じゃないし、雰囲気も悪くなさそうだから、順番なら引き受けるか」という状態を作ることです。
- デジタル化で負担を減らす(物理的ハードルを下げる)
- 強制しない(心理的ハードルを下げる)
- 楽しむ姿勢を見せる(感情的ハードルを下げる)
この3つが揃えば、役員は「罰ゲーム」ではなく「期間限定の地域貢献プロジェクト」に変わります。
私が退任する際、次の会長に引き継いだのは、分厚い資料だけでなく「役員って、やり方次第で意外と面白いよ」という前向きな空気感でした。
まとめ|「なり手がいない」を乗り越えるために
最後に、役員のなり手不足に悩むあなたへの提案をまとめます。
- 役員をやりたくないのは当然と受け入れ、相手を責めない。
- 公平な選出方法(選挙や厳格な輪番)で、断る理由をなくす。
- 仕事を徹底的に効率化し、「忙しくてもできる」ことを証明する。
- 強制力をなくし、休んでもいい安心感を与える。
- リーダー自身が楽しむことで、周囲を巻き込む。
「どうせやるなら楽しもう」
この言葉を合言葉にしてみてください。
あなたの代で「役員は辛いもの」という常識を壊すことができれば、それが地域にとって最大の貢献になります。そして何より、あなた自身の2年間が、苦役ではなく「充実した時間」に変わるはずです。
まずは、次の会議で「いらない仕事、やめませんか?」と提案することから始めてみてください。



