「引き継ぎ資料、これだけですか?」
「去年のこの行事、どうやって準備したんですか?」
春は自治会の役員交代の時期。
しかし、多くの自治会では「前任者から十分な資料がもらえなかった」「口頭だけで説明されて忘れてしまった」というトラブルが後を絶ちません。
「記憶」ほど曖昧なものはありません。
私は以前、自治会長を務めた際、引き継ぎをわずか1時間で完了させました。
もちろん、手を抜いたわけではありません。「聞かれない仕組み」を作っておいたからです。
この記事では、私が実際に次期会長へ渡した「引き継ぎ資料の完全チェックリスト」と、「誰がやっても迷わない仕組みの作り方」を公開します。
引き継ぎで渡すべき資料チェックリスト
まずは結論から。
以下のリストにあるものが揃っていれば、次の役員は困りません。
紙で渡すもの、データで渡すもの、それぞれ整理しておきましょう。
1. 申請・申込関連の書類
役所や業者への申請は、一番の「つまづきポイント」です。
- ✅️ 申請書の控え(コピー)
→ 実際に提出した書類のコピー。「どこに何を書けばいいか」の見本になります。 - ✅️ 書き方の手引き
→ 記入時の注意点など。 - ✅️ 申請の流れメモ
→ 「いつ」「どこへ」「誰に」提出したかの記録。 - ✅️ 補助金申請の記録
→ 金額や添付書類の内容。
2. 会議資料
- ✅️ 過去の議案書・レジュメ
- ✅️ 議事録(決定事項がわかるもの)
→「話し合った結果、どうなったか」の結論が重要です。 - ✅️ 役員会・班長会の出席簿
3. 備品・設備関連
- ✅️ 備品台帳
→ 自治会が所有しているモノのリスト。 - ✅️ 設備リスト・管理マニュアル
→ 公民館や集会所のカギの場所、ブレーカーの位置、エアコンのリモコン操作など。
4. 年間スケジュール・カレンダー記録
これが最も重要です。
- ✅️ 年間カレンダー(実績入り)
→「予定」ではなく「実際にいつ何をしたか」の記録。 - ✅️ 行事ごとの必要物リスト
→ そのイベントで使った道具、資料、買い出しリスト。 - ✅️ 写真・動画の記録
→ 会場の設営状況や、イベント当日の様子。百聞は一見に如かずです。
5. テンプレート・フォーマット
- ✅️ 回覧板のテンプレート
- ✅️ 総会・役員会の案内文ひな形
- ✅️ 参加受付フォーム(QRコード等)
- ✅️ 名簿のフォーマット
引き継ぎのタイミングと期間
4月の総会で役員が交代するため、3月に入ったら動き出します。
理想的なスケジュールの目安は以下の通りです。
| 時期 | フェーズ | やること |
|---|---|---|
| 3月上旬 | 準備期 | 次期役員候補の決定 資料の整理・データ化 |
| 3月中旬 | 実施期 | 引き継ぎの実施(対面で約1時間) 重要事項の口頭説明 |
| 3月下旬 | 予備期 | 質問対応(LINE等で) 追加資料の送付 |
| 4月1日 | 開始 | 新体制スタート |
どれくらい時間がかかる?
私の場合は、対面での引き継ぎは約1時間でした。
通常、半日〜1日かけて説明することもありますが、資料とデータが整理されていれば、確認作業だけで終わります。
「ここに全て書いてあるので、困ったら見てください」で済むからです。
「聞かれない引き継ぎ」の作り方
なぜ1時間で終わるのか。
それは「カレンダーに残して記憶から消す」という運用を徹底していたからです。
1. カレンダーに残して、脳のメモリを解放する
自治会長の仕事は多岐にわたります。全てを覚えておくのは不可能ですし、ストレスになります。
私は「Googleカレンダー」を使い、全ての予定とタスクを記録しました。
そして、「記録したから忘れていい」と自分に言い聞かせ、脳のメモリを解放しました。
2. 「同じ時期のカレンダー」が最強のマニュアル
デジタル化の最大のメリットはここです。
次の会長が「5月は何をすればいいんだっけ?」と思った時、去年の5月のカレンダーを見れば答えが書いてある状態を作りました。
- 役所から書類が届く時期
- 回覧板を作るタイミング
- 祭りの準備を始める日
これらが全て記録されていれば、わざわざ前会長(私)に電話して聞く必要がありません。
「カレンダーを確認してください」で済みます。
3. 記録は「未来の会長」へのプレゼント
記録を残すのは、その時は正直「めんどくさい」です。
しかし、それは未来の自分を楽にし、さらには次の会長を助ける資産になります。
自治会全体にとって、「人に依存しない仕組み」こそが最大の財産です。
引き継ぎで困らないための準備
今から役員をやる方、現在役員の方へ。
スムーズな引き継ぎのために、今からできる準備です。
フォーマット(記録の型)を決めておく
私が最初に失敗したのは「記録の仕方がバラバラだった」ことです。
途中で気づいて、以下のルールを決めました。
| 項目 | ルール例 | メリット |
|---|---|---|
| ファイル名 | 20250501_総会資料_作成済 | 日付順に並ぶので探しやすい |
| 保存場所 | 行事ごとのフォルダを作成 | 関連資料がまとまる |
| 写真・動画 | 「Googleフォト」等のクラウドへ | 容量を気にせず保存・共有できる |
これだけで、検索の手間が激減します。
写真と動画を残しまくる
文字で「テントを3張、広場の中央に設置」と書くより、設営後の写真を1枚残す方が100倍伝わります。
スマホで撮って、Googleフォトの「行事アルバム」に放り込んでおくだけでOKです。
私が引き継ぎで失敗・反省したこと
偉そうなことを書いていますが、最初から完璧だったわけではありません。
最初は「探り探り」で記録していたため、フォーマットが確立しておらず、情報の粒度がバラバラでした。
「あの資料、どこに入れたっけ?」と探す時間もありました。
最初にフォーマットを決める!
これが、これから役員をやる方への最大のアドバイスです。
形式が決まっていれば、何も考えずにステップに沿って作業し、記録するだけで済みます。
まとめ|引き継ぎは「記録」で決まる
スムーズな引き継ぎの正体は、「正確な記録」です。
- 資料を揃える(申請書控え、会議資料、備品台帳など)
- カレンダーに残す(いつ・何をしたか・何が必要だったか)
- デジタルで共有する(検索できるようにする)
これらができていれば、引き継ぎは1時間で終わります。
そして、あなたの任期中のストレスも大幅に減るはずです。
「紙とハンコの世界」から、少しずつ「楽な世界」へ変えていきましょう。

