「うちの自治会は高齢者が多いから、デジタル化なんて絶対無理」
「スマホを持っていない人もいるし、説明してもわからないと言われるのがオチだ」
そんなふうに諦めていませんか?
確かに、高齢者が多い地域でのデジタル化はハードルが高く感じられます。
「難しい」「わからない」という声が上がるのも事実です。
しかし、進め方と心構えさえ間違えなければ、高齢者が多い自治会でもデジタル化は十分に可能です。
大切なのは、「無理にしなくていい」というスタンスを持つこと。
今回は、実際に高齢者が多い自治会で役員を務め、デジタル化を進めた私の経験をもとに、具体的な進め方と、反対されたときの乗り越え方をお伝えします。
高齢者が多い自治会の現実
まず、私たちが直面する「現実」について共有しましょう。
これを理解しておくだけで、気持ちがだいぶ楽になります。
「難しい」「わからない」という反応は当然
デジタル化の話を持ち出すと、必ずと言っていいほど「難しい」「わからない」「私にはできない」という反応が返ってきます。
これはごく普通の反応です。
今まで紙と電話で何十年もやってきたのですから、未知のものに対する拒否反応が出るのは当然のこと。
ここで「なんでわかってくれないんだ」とイライラしてはいけません。
「そういうものだ」と受け止めることからスタートします。
全員にすぐに対応してもらおうと意気込むと、役員自身が疲弊してしまいます。
でも興味がある高齢者もいる
一方で、意外な発見もありました。
「難しい」という声が多い中で、
「実はスマホをもっと使ってみたかった」
「孫とLINEをしているから興味はある」
という高齢者も確実に存在するのです。
実際、私の自治会でも、デジタル化に興味がある方は積極的に学ぶ姿勢があり、吸収も早かったです。
「やってみたらすごく便利だ」と喜んでくれる方もいました。
ネガティブな声だけに目を向けず、こういった「前向きな層」を見つけることが第一歩です。
成功の秘訣は「無理にしなくていい」というスタンス
私がデジタル化を進める上で、最も重要だと感じたのは「無理にしなくていい」というスタンスです。
これが成功の秘訣と言っても過言ではありません。
全員に対応させようとしない
自治会のデジタル化というと「全員一斉導入」を目指しがちですが、高齢者が多い地域でそれは不可能です。
「できる人、したい人だけでいい」
まずはこのラインで区切ります。
「全員やらなくていい」と明言することで、強制されることへの反発心を避けることができます。
便利さは伝えるが、押し付けない
「LINEで回覧板が見られたら、雨の日に家を出なくていいですよ」
「役員の連絡網がスマホで完結したら楽ですよ」
こういったメリットはしっかりと伝えます。
しかし、伝えた後の反応を見て、相手が難色を示したらそれ以上は踏み込みません。
「デジタル化すればこんなに楽になりますよ」とは伝えますが、無理強いは絶対にしないことが鉄則です。
やる人はやる、やらない人はやらない
冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、私の経験上、これに尽きます。
- やる人:
便利さ、楽さを体感して「ありがとう」と感謝してくれる
- やらない人:
どんなに丁寧に説明しても、今はやらない
この二極化は必ず起きます。
「やらない人は、何をやってもやらない。それでいい」と割り切ることが大切です。
やる気のある人たちだけで先行してメリットを享受し、実績を作っていく方が建設的です。
高齢者にデジタル化を理解してもらう具体的な方法
では、実際にどうやって導入を進めていけばよいのでしょうか。
説明会で資料を配るだけでは不十分です。
いきなり「やってください」ではなく「一緒にやる」
「登録しておいてください」「アプリを入れておいてください」と投げるだけでは、多くの高齢者はそこで止まってしまいます。
最初は「一緒にやる」ことから始めましょう。
集会所のWi-Fi設定やLINEの友達追加など、スマホの画面を一緒に見ながら、その場で設定を済ませてあげるのが一番の近道です。
少しずつ一緒に操作しながら覚えてもらうことを意識しました。
簡単なことから始める
最初から高度な機能を使おうとしてはいけません。
- まずはLINEでスタンプを一つ送ってみる
- 回覧板の写真を開いてみる
とにかく「簡単なこと」から始めます。
「あれ? 意外と簡単やん」と思ってもらう努力が必要です。
ハードルは極限まで下げてスタートしましょう。
「使えない」と言われたら、できることを一緒に探す
「私は機械音痴だから使えない」と言われた場合も、全否定せずに寄り添います。
「文字を打つのは大変ですよね。でも、見るだけならどうですか? タップするだけですよ」
「『了解』のスタンプを押すだけならできそうですか?」
その人ができることを一緒に探して、小さな成功体験を積み重ねてもらいます。
家族のサポートを活用する
高齢者本人だけでなく、そのご家族を巻き込むのも非常に有効な手段です。
家族が手伝ってくれるなら、家族に先に説明する
同居しているご家族(息子さん、娘さん、お孫さんなど)がいらっしゃる場合は、ご家族に先に説明して理解してもらう方が話が早いことが多々あります。
「おばあちゃんに説明しても忘れちゃうから、息子さんに設定方法を伝えておきますね」
というアプローチです。
家族にサポートしてもらうのが一番確実
役員が毎回「使い方がわからない」という問い合わせに対応するのは現実的ではありません。
日常的にそばにいる家族がサポートしてくれる体制ができれば、運用はぐっと安定します。
「わからないことがあったら、まず息子さんに聞いてみてくださいね」と伝えておくのも一つの手です。
紙との併用で「置いていかない」
デジタル化を進めると、「スマホを使えない人は切り捨てるのか!」という批判が出ることがあります。
これを防ぐには「併用」が鍵となります。
無理にデジタル化に対応してもらおうとしない
「今日からすべてデジタルにします」は暴動のもとです。
「デジタルを使える人はデジタルで。無理な人は今まで通り紙で」という選択制にします。
少しずつデジタル化に移行してもらえばいい、という長い目で見守るスタンスで進めました。
デジタル化できる人が増えれば、全体の負担は減る
「紙の人もいるなら、結局役員の手間は変わらないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、100世帯のうち30世帯でもデジタル化できれば、回覧板を回すルートは減り、印刷枚数も3割減ります。
100%を目指さなくても、一部がデジタル化するだけで全体の負担は確実に減るのです。
反対されたときの対応
それでも、「そんなもの必要ない!」と反対されることはあります。
その時の対応法です。
「無理にしなくてもいいです」と伝える
反対されたら、戦ってはいけません。
「あ、無理にしなくても大丈夫ですよ。できる人、したい人だけで進めますので、○○さんは今まで通りで結構です」
と、さらりと伝えましょう。
強制ではないことを明確にすれば、反対する理由はなくなります。
説得しようとせず、相手の「やりたくない」という意思を尊重してあげてください。
便利さを見せて、興味を持ってもらうのを待つ
反対していた人も、周りの人が「LINEで連絡来て便利だったわ~」「雨の中、回覧板持っていかなくて済んだよ」と話しているのを聞くと、気持ちが変わることがあります。
「便利さ」という事実を見せること。
そして、向こうから興味を持ってくれるのを気長に待つこと。
これが一番平和的で確実な普及方法です。
まとめ|全員ではなく「できる人から」でいい
高齢者が多い自治会でのデジタル化について、私の体験から得たコツをお伝えしました。
- 「無理にしなくていい」というスタンスを貫く
- いきなり一人でやらせず、最初は「一緒にやる」
- 家族のサポートも積極的に活用する
- 紙と併用し、できない人を責めない
「やる人はやる、やらない人はやらない」。それでいいです。
できる人から少しずつ始めれば、確実に自治会の運営は楽になっていきます。
まずは役員同士や、協力的な数名から小さく始めてみませんか?
その「便利!」という声が、徐々に地域全体を変えていくはずです。


