「隣の家のピアノがうるさいんです」
「夜中にBBQしてる家があって迷惑してる」
「犬がずっと吠えてて眠れない」
自治会長をしていると、避けては通れないのが「ご近所トラブル」の相談です。
正直、困りますよね。
「そんなこと言われても警察じゃないし……」と悩み、直接注意しに行くのも気が引ける。かといって「何もしない」わけにもいかない。
私も自治会長を2年務める中で、いくつものトラブル相談を受け、頭を抱えた経験があります。
結論から言うと、自治会ができることは限られています。
無理に解決しようとすると、会長自身が火の粉を浴びることになりかねません。
この記事では、私が実際に対応した事例と、「ここからは警察案件」と線引きした基準を、実体験ベースでお伝えします。
2026年の今、求められるのは「解決」ではなく「交通整理」です。肩の力を抜いて読んでください。
実際に受けた相談の例
- 騒音(楽器・ペット・人の声)が相談の8割を占める
- 「監視されている」といったプライバシー関連の相談も増えている
- 自分(会長)が直接被害を受けていない案件がほとんど
私が会長時代に実際に受けた相談は、以下のようなものでした。
| トラブルの種類 | 具体的な相談内容 |
|---|---|
| 騒音(生活音) | 朝早くから窓を開けてピアノ練習をしている。 子供の足音がドタバタ響く。 |
| 騒音(大人の行動) | 夜中に庭で酒を飲んでプールに入って騒いでいる。 夜遅くに風呂場で熱唱している声が聞こえる。 |
| 騒音(乗り物) | バイクの空ぶかしや、改造車のマフラー音がうるさい。 |
| ペット関連 | 飼い犬が無駄吠えをしていて眠れない。 散歩のフンが放置されている。 |
| プライバシー | 隣の家の防犯カメラがこっちを向いている。 「監視されている気がする」という不安。 |
読んでいて「うわ、うちの班でもある……」と思われた方も多いのではないでしょうか。
これらは生活リズムや習慣の違いから来るものが多く、当事者にとっては深刻でも、第三者からは判断が難しいケースが大半です。
自治会としてどこまで関わるか|私の基本スタンス
- 原則、個別の家への「直接訪問・直接注意」はしない
- 誰からの苦情か特定されるリスク(報復リスク)を避けるため
- 自治会は「裁判官」ではないため、白黒つける必要はない
相談を受けたとき、私が徹底していたスタンスは「直接介入は避ける」ことです。
正義感の強い会長さんほど、「私が言ってきてやる!」と相手の家に乗り込みがちですが、これは絶対にNGです。
なぜ直接注意してはいけないのか?
理由は2つあります。
1.告げ口した人がバレるから
会長が注意に行くと、相手は必ず「誰が言ったんだ?」と考えます。
隣近所のトラブルは、消去法で「あそこの家だ」とすぐに特定できてしまうことが多い。
これにより、トラブルがさらに悪化(報復など)する危険があります。
2.会長が恨まれるから
「自治会長が文句を言いに来た」と受け取られ、今度はあなたがその家から敵対視されるようになります。
自治会はあくまで住民同士の互助組織です。警察のような強制力はありません。
「直接言いにいくと角が立つ」という現実をまず受け入れましょう。
私がやった対応|回覧板で「やんわり伝える」
- 基本対応は「回覧板」での全体周知のみ
- 個人を特定せず、「地域全体の問題」として周知する
- 相手に「気づかせる」ことが最大の目的
私が最も効果的だと感じたのは、回覧板を使って「やんわり伝える」作戦です。
特定の個人を攻撃せず、「みんなで気をつけましょう」という空気を醸成します。
実際に使った「角が立たない」回覧板の文例
以下は、私が実際に作成して効果があった文面です。そのままコピペして使ってください。
【回覧】生活音に関するお願い
住民の皆様へ
日頃より自治会活動にご協力いただきありがとうございます。
さて、最近ご近所の方から「夜間の音」について、
少し気になるというお声をいただいております。
これからの季節、窓を開ける機会も増えるかと思います。
皆様におかれましては、以下の点について今一度ご配慮いただけますと幸いです。
・ 夜〇時以降の楽器の演奏や大きな音量でのテレビ
・ 屋外での話し声やペットの鳴き声
お互い様の部分もございますが、
誰もが気持ちよく暮らせる地域にするため、
ご理解とご協力をお願いいたします。
〇〇自治会 会長
この方法のメリットは、「誰が言ったかバレない」こと、そして「心当たりのある人が、自分で気づくチャンスを与えられる」ことです。
解決できたこと・できなかったこと
- 【解決○】無自覚だった人は、回覧板だけで改善する
- 【解決✕】感情的な対立や、確信犯的な迷惑行為は直らない
- 自治会の力で解決できるのは「全体の3割程度」と割り切る
回覧板作戦で全てが解決するわけではありません。
私の経験上の勝率は以下の通りです。
| 結果 | 具体的なケース | なぜそうなったか? |
|---|---|---|
| 解決できた (改善した) | ・ピアノの練習時間 ・夜間のBBQ ・犬の無駄吠え対策 | 「無自覚」だったから。 「あ、迷惑かけてたんだ」と気づき、窓を閉めるなどの配慮をしてくれた。 |
| 解決できなかった (変化なし) | ・隣人同士の不仲による言いがかり ・深夜の騒音(確信犯) ・ゴミ屋敷系 | 「感情」や「性格」の問題だから。 当事者同士が憎しみ合っていたり、聞く耳を持たない人の場合、紙一枚では動かない。 |
回覧板で改善しない場合、これ以上自治会が深入りしても泥沼化するだけです。
ここで「自分の力が足りない」と落ち込む必要はありません。
ここから先はプロ(行政・警察)の領域です。
「これは自治会の範囲外」と判断したケース
- 怒号が飛び交う、身の危険を感じる場合は即撤退
- 役場に相談しても「民事不介入」だが、記録を残す意味はある
- 最終的な解決策は「警察への通報」一択
「回覧板を回しても変わらない」「むしろ喧嘩が激しくなった」。
このような場合は、きっぱりと「自治会の手に負えません」と白旗を上げてください。これが会長として自分の身を守る最善策です。
私が実際に手を引いたライン(撤退基準)
- 当事者が感情的になっている(怒鳴り合いなど)
- 法律や条例違反の疑いが強い(ゴミの不法投棄、明らかな騒音規制値超え)
- 「あいつを追い出してくれ」など、排除を求められた時
役場と警察、どっちに相談?
実際に私が役場に相談に行った際、担当者から言われたのは「個人間のトラブルには役所も介入できません。実害があるなら警察へ」という言葉でした。
冷たく感じるかもしれませんが、これが現実です。
ですので、相談者にはこう伝えます。
「自治会として全体への注意喚起は行いました。これ以上は強制力がありません。
もし身の危険を感じたり、我慢できない騒音であれば、その瞬間に110番(または#9110)通報してください。
警察官が現場に来て注意するのが一番効果があります」
自治会長が間に入るより、制服を着た警察官が来るほうが100倍効果があります。
「冷たい会長」と思われるのを恐れず、適切な専門機関へ誘導してください。
相談を受けたときの対応フロー
- 判断基準を明確にしておくと、相談時に動揺しない
- ステップ1(傾聴)→ ステップ2(全体周知)→ ステップ3(専門機関へ)
- このフローを他の役員とも共有しておく
最後に、私が実践していた対応フローをまとめます。
相談が来たら、このチャートに従って機械的に処理するくらいが丁度いいです。
A[相談発生] --→ B[緊急性は?]
B -- 高い(暴力・事件性) --> C[即、警察へ通報を促す]
B -- 低い(生活音・マナー) --> D[まずは話をじっくり聞く(傾聴)]
D --> E[回覧板・掲示板で全体へ注意喚起]
E --> F[改善した?]
F -- YES --> G[解決!]
F -- NO --> H[個別の介入は不可と伝える]
H --> I[役所・警察への相談窓口を紹介]
まとめ|自治会は「仲裁役」ではなく「つなぎ役」
ご近所トラブルの対応は、自治会長にとって最もストレスのかかる仕事の一つです。
しかし、ここまで読んでいただいたあなたなら、もう大丈夫です。
- 直接注意はNG。 回覧板で「やんわり全体周知」が正解。
- 解決できるのは「無自覚な人」だけ。 確信犯は変えられない。
- 喧嘩レベルの揉め事は自治会の範囲外。 警察へパスを出す。
- 自治会は「仲裁役(裁判官)」ではなく、「つなぎ役」に徹する。
「なんとかしてあげたい」という優しさは大切ですが、深入りしてあなたが消耗してしまっては元も子もありません。
「できることはやった。あとは専門家にお任せ」というスタンスで、適度な距離感を保って対応してください。
もし、トラブル対応だけでなく「そもそも自治会運営自体がしんどい」と感じているなら、以下の記事も参考にしてみてください。

