「今年の総会、Zoomとかでオンラインにしたほうがいいのかな?」
「他の自治会はやっているらしいけど、うちはどうしよう……」
コロナ禍をきっかけに、自治会でもオンライン総会の導入を検討する声が増えました。「DX」「デジタル化」という言葉を聞くと、なんとなくやらなきゃいけないような気になりますよね。
しかし、実際に自治会長を経験した私の結論から言うと、「無理に導入する必要はない」というのが本音です。
もちろんメリットはありますが、
運営側の負担や現実的な手間を考えると、全ての自治会におすすめできるものではありません。
この記事では、オンライン総会のメリット・デメリット、そして「自分の自治会には本当に必要なのか?」を判断するための現実的な基準を、経験者の視点から正直にお伝えします。
オンライン総会とは?
まずは簡単に、オンライン総会について整理しておきましょう。
Zoom等を使って自宅から参加できる総会
公民館や集会所に足を運ばず、自宅のパソコンやスマホからインターネットを通じて参加する総会のことです。
「Zoom」や「Google Meet」、「LINEビデオ通話」などがよく使われます。
完全オンラインとハイブリッド型
開催形式には大きく分けて2つのパターンがあります。
- 完全オンライン型:
役員も含め、参加者全員がそれぞれの場所からオンラインで参加する形式。 - ハイブリッド型:
役員や一部の会員は会場に集まり、来られない人はオンラインで参加する形式。
自治会の場合、高齢者の方も多いため、いきなり「完全オンライン」にするのは難しく、やるとしても「ハイブリッド型」になるケースがほとんどでしょう。
オンライン総会のメリット
参加する会員さん側から見た場合、オンライン総会には確かなメリットがあります。
1. 家から参加できる(気軽さ)
最大のメリットはこれです。
「ちょっと顔を出そうかな」と思っても、着替えて準備して公民館まで行くのは億劫なもの。
オンラインなら、カメラをオフにすれば極端な話、部屋着やすっぴんでも参加できます。
外出先からスマホで視聴することも可能です。
2. 参加したくてもできない人に対応できる
- 体調が優れない方
- 小さな子供がいて目が離せない方
- 介護で長時間家を空けられない方
- 仕事の都合で帰宅がギリギリになる方
こういった「参加したい気持ちはあるけれど、物理的に会場に行けない」という方々の受け皿になれます。
3. デジタル化が進んでいれば案内は簡単
もしあなたの自治会ですでにLINE公式アカウントや、LINEの「回覧板チャット」が導入されているなら、Zoomの招待リンクをポンと送るだけで案内が完了します。
紙のお知らせを配る手間が省けるのは、デジタル化の恩恵と言えるでしょう。
オンライン総会のデメリット【運営側の本音】
さて、ここからが本題です。
参加者にはメリットがありますが、運営する役員側には「見えにくい負担」が重くのしかかります。
私が「無理しなくていい」と考える理由はここにあります。
1. 準備の手間が激増する
「ただZoomをつなぐだけでしょ?」と思われがちですが、そう簡単ではありません。
- 会場のどこにカメラ(スマホ)を置くか?
- マイクは会場の声をちゃんと拾えるか?
- Wi-Fiの接続は安定しているか?
- 誰がカメラを操作するのか?
特に対面とオンラインを同時に行う「ハイブリッド型」の場合、会場の設営もしつつ配信の準備もしなければならず、対面だけでやるよりも圧倒的に手間がかかります。
2. デジタルリテラシーのある役員が必須
Zoomのホスト(主催者)として、参加者の承認をしたり、ミュート管理をしたりする操作が必要です。
「Zoomって何?」という役員ばかりの状態で導入すると、当日にトラブルが起きて総会自体が止まってしまうリスクがあります。
3. 参加者が増えると、質問も増える(これが大変!)
これは少しブラックな本音になりますが……。
オンラインで気軽に参加できる人が増えると、その分、意見や質問も増える傾向にあります。
「活発な議論ができて良いことだ」という建前はありますが、運営側としては、「質問が増えると総会が終わらない」「その場で答えられない鋭い質問が飛んできて困る」というのが正直なところです。
多くの自治会役員は、「総会を滞りなく、スピーディーに終わらせたい」と願っています。
オンライン化によってそのハードルが上がってしまう可能性があるのです。
高齢者が多い自治会での現実
「うちは高齢者が多いから……」という悩みもよく聞きます。
実際、ここが一番のネックです。
参加方法のサポートが大変
「Zoomの入り方がわからない」「音が聞こえない」といった問い合わせが必ず来ます。
これに対応するために、事前に「Zoom参加マニュアル」を作って配布したり、個別に教えたりする必要が出てきます。
この資料作成やサポートの手間は、ボランティアの域を超えてしまうこともあります。
最初の一歩のハードルが高い
一度やり方を覚えてしまえば楽になるのですが、そこまでの導入コスト(時間と労力)が非常に高いです。
「そこまで苦労して導入しても、結局オンラインで参加したのは2〜3人だった」という結果になることも珍しくありません。
書面決議とオンライン総会、どちらがいい?
コロナ禍で普及したもう一つの手法に「書面決議(書面表決)」があります。
- 書面決議:
資料を配り、賛否を用紙(またはWebフォーム)で提出してもらう。 - オンライン総会:
リアルタイムで映像をつないで会議を行う。
正直なところ、運営側として一番楽なのは「対面のみ」または「書面決議」です。
書面決議なら、集計の手間はありますが、当日の進行トラブルや予期せぬ質問攻めに遭うリスクはありません。
「どうしてもリアルタイムで議論が必要な議題」がない限り、無理にオンライン総会を開かずとも、書面決議で十分なケースが多いのではないでしょうか。
あなたの自治会は導入すべき?チェックリスト
ここまで踏まえた上で、それでも導入を検討すべきかどうか、判断基準をまとめました。
経験者としての本音:自治会活動に「フルベット」できますか?
最後に、元自治会長としての個人的な本音をお伝えします。
自治会役員はあくまでボランティアです。本業や家庭がある中で、貴重な時間を割いて活動しています。
オンライン総会は、確かに便利で先進的な取り組みです。しかし、それを実現するためには、誰かの献身的な準備と努力が必要です。
もし、あなたが「自治会活動に情熱があり、時間も体力もフルベットできる!」という状態なら、ぜひ挑戦してみてください。地域にとって素晴らしい資産になるはずです。
しかし、もし「本業も忙しいし、これ以上負担が増えるのはキツイ……」と感じているなら、無理に導入する必要は全くありません。
「ニースがあればやる、なければやらない」
それくらいドライな判断で十分です。
まとめ|オンライン総会は「必要なら」でOK
オンライン総会は魔法の杖ではありません。メリットもあれば、運営側の負担増というデメリットも確実に存在します。
- 家から参加できる利便性は高いが、運営の手間は倍増する。
- 高齢者が多い場合、導入サポートのハードルが高い。
- 書面決議や対面総会で回っているなら、無理に変える必要はない。
「DXを進めなきゃ」と焦る必要はありません。あなたの自治会の実情と、役員の余力に合わせて、現実的な選択をしてくださいね。
もし「総会ではなく、まずは動画配信くらいから始めたい」という場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。
また、高齢者向けのデジタル活用については、以下の記事でも詳しく解説しています。

