会長に就任すると、最初に出てくる疑問はだいたい同じです。
「結局、自治会長って何をするの?」
「仕事が増えて生活が回らなくならない?」
「いつが一番忙しい?」
ここでは、私が2年間自治会長を務めた体験をもとに、きれいごと抜きで整理します。
大変なことも確かにあります。ただ、全体像と山場がわかるだけで、気持ちはだいぶ楽になりますよ。
自治会長の主な仕事
自治会長(町内会長)の仕事は、ざっくり言うと「会議」「調整」「方針決定」です。
現場の体感では、実務の手を動かす量よりも、関係者と話す量が多い役割になります。
会議への出席が中心
まず、会長は会議が多いです。
地域にもよりますが、よくあるのは次のあたりです。
- 自治会長会(同地区の会長が集まる)
- 連合自治会の会議(さらに広い単位)
- 行事前の事前打ち合わせ
- 他の自治会との調整の場(共同イベント、備品の貸し借り、回覧の取り決めなど)
会議に出るだけなら、ただ座っている時間もあります。
でも本番は、会議の前後です。
「会議で決まったことを、自治会内に持ち帰って説明する」
これが地味に重いです。
調整・ファシリテーション
自治会は、年齢も仕事も価値観も違う人が混ざります。
だからこそ、話し合いが進みにくい場面が出ます。
会長の役割は、誰かを論破することではなく、同じイメージを持って話せる状態に整えることです。
例えば、こんなズレがよく起きます。
- 「安全のため」なのか「慣習だから」なのか、目的が違う
- 予算の感覚が違う(節約派/必要なら出す派)
- 手間の受け取り方が違う(やれる人/忙しくて厳しい人)
このズレを放置すると、会議は長くなり、結論が出なくなります。
会長がやるべきは、目的と前提を揃えることです。
目的を揃えるための一言
会議が散らかったときは、こういう一言が効きます。
- 「今回、何を決めれば前に進みますか?」
- 「目的は〇〇で合っていますか?」
- 「A案とB案、違いは“手間”と“費用”で合っています?」
会長がこの軸を出すだけで、話は一気に進みやすくなります。
方針決定・決裁
会長には、決定権があります。
もちろん独断で何でも決めるわけではありません。ただ、最後に背中を押す役割は会長に回ってきやすいです。
- 今年は何を優先するか(防災/イベント/清掃/見守りなど)
- どこまでやるか(縮小する/現状維持/新規を入れる)
- 新しい取り組み(デジタル化、LINE運用、Googleフォーム導入など)
「決める」って、気持ち的には重いです。
でも逆に言うと、会長だからこそ自治会を前に進められます。
年間スケジュール|特に忙しい時期
自治会長の仕事は、年間で波があります。
ずっと忙しいというより、「山場が何回か来る」感じですね。
先に全体像を表にまとめます。
自治会長の年間スケジュール(目安)
| 時期 | 主な仕事 | 忙しさ | ひとこと |
|---|---|---|---|
| 4〜5月 | 新年度スタート、役員顔合わせ、定期総会準備・開催 | 高 | ここで1年の土台が決まる |
| 6〜7月 | 行事の準備、回覧・連絡、会長会など | 中 | 体制づくりの調整期間 |
| 8〜10月 | 盆踊り〜秋祭りなどイベントラッシュ | 最高 | 準備と打ち合わせが止まらない |
| 11〜12月 | 反省整理、会計中間、次年度の検討が少しずつ | 低〜中 | ここで息がつけることが多い |
| 1〜3月 | 次年度準備、予算・計画、役員候補、引き継ぎ | 高 | まとめと次へのバトン |
地域の行事の種類で変わりますが、忙しさの山はだいたいこの形に寄ります。
4月〜5月:新年度スタート・総会
新年度は、いきなり密度が高いです。
- 役員の顔合わせ
- 前年度からの引き継ぎ確認
- 定期総会の準備(資料、会場、議案、委任状、出欠)
- 総会開催と決議
ここで「今年の運営方針」と「役割分担」を決めておくと、後がかなり楽になります。
総会は「イベント」というより「手続き」です。
だからこそ、段取りが命になります。
8月〜10月:イベントラッシュ
私の体感で、ここが一番きつかったです。
8月の盆踊りが終わると、すぐに秋祭りの打ち合わせが始まります。
そこから祭りが終わるまで、ノンストップで忙しい。
忙しさの正体は「本番」より「準備」です。
- 打ち合わせ(関係者が多い)
- 役割分担(揉めやすい)
- 物品の手配(不足すると致命的)
- 回覧・告知(締切がシビア)
- 当日の安全対応(保険、交通、救護)
本番が始まれば、やることは割と決まっています。
きついのは、そこに至るまでの“説明と調整”です。
1月〜3月:次年度準備・引き継ぎ
年明けからは、「次の年を回す準備」に入ります。
- 次年度の予算・計画づくり
- 役員候補の選定(ここが一番気を使う)
- 引き継ぎ資料の準備
- 必要なら規約やルールの見直し
この時期は、表に見える忙しさより、気持ちの疲れが出やすいです。
「次の人に申し訳ない状態では渡せない」というプレッシャーもあります。
だからこそ、完璧を目指しすぎない方が続きます。
「少しでも良い状態で渡す」くらいが現実的です。
想像より大変だったこと
会長の仕事でしんどいのは、作業量よりも「人の違い」です。
価値観の違う人たちとの調整
自治会活動をより良くしようとしても、そもそも同じイメージを持って話し合えない。
これが一番の壁でした。
- 何を「良い」と思うかが違う
- 何を「無駄」と感じるかが違う
- 過去の経験や成功体験が違う
この状況で、全員の満点を取りに行くと詰みます。
会長がやるべきは、落としどころを作って前に進めることです。
現場で効いた考え方
- 反対の理由は「正しさ」より「不安」であることが多い
- 反対意見は、だいたい“守りたい何か”がある
- まず不安を言語化してもらうと、建設的になりやすい
説明の難しさ
新しいことを始めようとすると、説明が必要になります。
- 「なぜ今それをやるのか」
- 「誰の負担が減るのか」
- 「リスクは何で、どう潰すのか」
説明は、1回で終わらないことが多いです。
わかったつもりでも、次の会議でまた同じ質問が出る。これが地味に疲れます。
だから、説明は「長文」より「一枚資料」が強いです。
- 目的
- 変更点
- メリット(誰が楽になるか)
- 不安への対策
この4点がまとまっているだけで、反応が変わることがあります。
想像より楽だったこと
会長=全部背負う、みたいなイメージがあるかもしれません。
でも実際は、環境が整うと意外と回ります。
優秀な人・柔軟な人がいると楽
自治会は、全員が大変な人なわけではありません。
- 段取りが得意な人
- 新しいものに抵抗が少ない人
- 連絡が早い人
- 一言で空気を整えてくれる人
こういう人が一人いるだけで、体感は変わります。
会長はまず、その人たちを見つけて味方につけるのが大事です。
イベント本番より準備が大変
さっき触れましたが、イベントは本番より準備が大変です。
本番は、役割が決まっているので「やるだけ」になります。
逆に準備は、決めることが多く、説明や調整が発生します。
この特徴を知っているだけで、気持ちが整います。
他の役員との役割分担
会長が全部やると、どこかで破綻します。
回る自治会は、だいたい「会長は会議・調整中心」で設計されています。
会長は会議・調整が中心
会長の仕事は、実務を抱えることではなく、実務が進む環境を整えることです。
- 会議で方向性を揃える
- 外部(他自治会・行政)との窓口になる
- 困ったときの最終判断をする
実務の細部は、各部長に任せる方がうまくいきやすいです。
各部長にその分野を任せる
よくある分担の例です。
- 副会長(総務部長):名簿作成全般、連絡網、回覧の管理
- 会計部長:会計全般(予算、集金、支出、決算)
- その他役員:担当分野(防災、環境美化、広報、イベント、見守りなど)
会長が「全部知っておく」必要はあります。
でも「全部やる」必要はありません。
部長の考えを尊重する
ここが大事なポイントです。
会長があまり口出しをしない。
部長の考えを尊重して任せる。
もちろん丸投げではなく、困ったときに支える形です。
信頼関係ができると、組織は本当に回りやすくなります。
任せるときのコツ
- 「任せる範囲」をはっきり言う
- 「判断基準」を一緒に決める
- 「困ったらここで相談していい」を先に作る
この3つがあると、任された側も動きやすいです。
会長になって最初にやるべきこと
就任直後にやりがちなのが、いきなり改革しようとすることです。
気持ちはわかります。でも、最初は急がない方が結果的に早いです。
根回しと信頼関係の構築
会長の仕事は、人を動かす仕事でもあります。
最初にやるのは「制度」より「関係づくり」です。
- 役員に挨拶して、安心してもらう
- 相談しやすい空気を作る
- 「勝手に決めない人」だと伝える
この土台がないと、どんな施策も通りにくいです。
他の役員の状況や価値観を聞く
ここは、しっかり時間を取った方が良いです。
- 何を大切にしているか
- 何が負担になりやすいか
- 過去に揉めたポイントは何か
- 今年やりたいこと/やりたくないこと
一人ひとりの考えがわかるだけで、会議の設計が変わります。
急がない、まずは観察
最初の数ヶ月は、現状把握に使う。
動くのはその後でも間に合うことが多いです。
- ここで焦ると、反発を呼びます。
- 反発が増えると、説明が増えます。
- 説明が増えると、会長が消耗します。
だから、最初は観察でOKです。
会長だからこそできること・やりがい
しんどい話が続きましたが、会長には会長の良さがあります。
決定権がある
会長は、目標や目指すべき方向性を決められます。
これは大きいです。
「今年はこれを優先する」「これは縮小して負担を下げる」「デジタル化を試験導入する」
こういう判断は、誰かが背負わないと進みません。
自治会を変えられるのは会長だけ
会長が本気で動くと、空気が変わることがあります。
会長が頑張っていたら、みんなも手伝ってくれる。
逆に会長が止まると、全体も止まりやすい。
それだけ影響力があるポジションです。
次の役員が楽になる仕組みを作れる
任期中に完璧な仕組みを作るのは難しいです。
でも、少しでも良い状態を作っていければ、次につながります。
- 連絡の型を作る
- 引き継ぎ資料を整える
- 役割分担を明文化する
こういう積み上げが、地域の運営を楽にします。
これから会長になる人へのアドバイス
最後に、これから会長になる人へ、実感として伝えたいことをまとめます。
会長という権威を「住民のために」使ってほしい
会長というだけで、周りはある程度尊重してくれます。
それは一種の権威です。
その権威を、住民のために使ってほしい。
誰かを従わせるためではなく、みんなが安心できる方向に使う。
この感覚があると、判断の軸がぶれにくくなります。
自治会が必要とされる存在になるために
自治会は、やり方次第で「負担」にも「助け合い」にもなります。
- 楽に回る仕組みを増やす
- 意味のある活動に寄せていく
- 無理な慣習は見直す
必要とされる存在になるには、無理を増やすより、負担を減らす方が近道なことも多いです。
少しでも良い状態を次に残す
任期中にすべてを変えるのは難しいです。
だから、少しでも良い状態を次に残す。
それだけでも、次の役員が救われます。
そして、その積み重ねがいい自治会につながります。
よくある質問(FAQ)
Q)自治会長の仕事はどれくらい大変ですか?
A)地域の行事数や役員体制で変わります。
ただ、忙しさのピークは「総会前(4〜5月)」「イベント期(8〜10月)」「引き継ぎ期(1〜3月)」に集中しやすいです。
山場の形を知って準備すると、体感はかなり変わります。
Q)仕事が忙しくても自治会長はできますか?
A)できます。
ポイントは「会長が実務を抱え込まない設計」にすることです。
役割分担と、任せる範囲の明文化があると回りやすいです。
Q)町内会長(自治会長)は何から手をつければいいですか?
A)最初は改革より、関係づくりと現状把握が優先です。
役員の状況・価値観を聞き、困りごとを把握してから動く方が結果的に早いことが多いです。
まとめ
自治会長の仕事と年間スケジュールについてお伝えしました。
ポイントをまとめます。
- 会長の仕事は会議・調整・方針決定が中心
- 8月〜10月のイベントシーズンが最も忙しい
- 価値観の違う人たちとの調整が最も大変
- 各部長に任せる役割分担がカギ
- 最初は急がず、信頼関係の構築から
大変なことも多いですが、会長だからこそ自治会を変えられます。
権威を住民のために使い、次の役員が楽になる仕組みを作る。 そんな会長を目指してみてください。


